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大阪家庭裁判所 昭和45年(少)516号 決定

少年 K・J(昭三二・一・二四生)

主文

本件を大阪市中央児童相談所長に送致する。

理由

一  少年は昭和四五年一二月四日付犯罪事実一覧表の窃盗の非行を犯し一四年以上の犯罪少年として同月一八日検察官から送致されたが、調査の結果、年齢は一三年一一ヵ月であることが明らかになつたものである。

二  この場合の事件処理に関しては問題がある。

少年法三条二項によれば、家庭裁判所は少年に対して審判権を有しないから同法一九条一項に該当し、審判不開始決定をすべきもののように考えられる。

しかし、家庭裁判所が司法的機能の面と同時に保護的機能の面をも併せ有することを認識し、その保護過程における選別機能と保護の中枢機関の役割に着目すると、家庭裁判所において適法に調査を開始しその保護過程に組み入れた以上、その後の調査によつて審判権がないことが判明したとしても、直ちに不開始決定をせずに事件を適当な問題処理機関に送致し、少年の保護育成の適正をはかることができると解するを相当とする。

三  一四年未満の審判権のない少年に対する保護処分を取消した場合の事件処理に関し、同法二七条の二・三項が同法一八条一項を準用しているのも前記二の趣旨のあらわれと解することができ、同法一八条一項は、問題少年の性格、行状、環境に照して、いわば実質的な意味において児童福祉法上の措置が相当と認められる場合のみならず、調査の結果一四歳未満であることが判明し、都道府県知事または児童相談所長の先議のためにいわば形式的な意味において児童福祉法上の措置を相当とする場合にも適用あるものと考える。

四  よつて、本件については、同法一八条一項を適用して少年の住所地を管轄する大阪市中央児童相談所長に送致することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 円井義弘)

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